ミュンヘン:経験談たち



夜のミュンヘンの建物たち。


前回の初日を経て、その後も素晴らしい同僚たちに恵まれ、楽しく働いているのだが、ホステルという性質上、なんとまぁいろいろなタイプな人たちに出会う機会が多い。


みなさんも、世の中いろんな人がおるなぁ。と感じはると思うが、ホステルは、「そんないろんな人が世界中から集まってます。」という場所で印象的な経験も多いので、今回は特に記憶に残っているものを残していきたいと思う。



〔なにごともほどほどに。〕

世界中のホステルの多くにはバーが併設されており、うちのホステルでも毎日バーが営業している。

ミュンヘンは特にオクトーバーフェスト発祥の地でビールが有名であるため、お酒が好きで訪れる客が多い。

旅人たちは、見ず知らずのもの同士、ホステルのバーでお酒を飲みながら、話に華を咲かせている。

回数は多くないものの、僕もバーで働く事があり、お客さんたちと楽しい時間を過ごしている。

特にフレンドリーなお客さんは宿泊している間、毎晩飲みにくることもあり、イギリス人のデービッドはそういうタイプの気前のええ兄ちゃんで、ウチのバーで新しく友達を作っては、みんなと仲良くなるという人やった。

10日以上連泊していたので、お互いの顔も名前も覚えて、「よう!デービッド!今日はなにしとったん?」というような感じで仲良くなっていた。

しかしシフト勤務である為、お客さんのチェックアウトの日と、僕のシフトがうまいことかみ合わず、お別れを言わずして去ってしまう事もよくある。

その後、しばらくデービッドを見ていなかったので、いつものごとく、(チェックアウトしたんやろうなぁ。)と思っていたのだが、二週間ほどたって、見覚えのある顔がロビーにいた。

「あれ、デービッドやん!どっかちゃう街行ってたん?!おかえり!」と声をかけるとデービッドは、
「せやねん。最高の場所におったわ!」と言った。

「えーどこどこ?良さげな場所知ってるんやったら教えてー!」と気さくに尋ねると、彼は真剣な顔で教えてくれた。

「あれから色んな人と知り合いになって、16日間連続で飲んでたら、肝臓いわして道にうずくまってしもて、緊急入院して点滴生活やった。」

続けて
「俺、誘われたら断られへんタイプやねんなぁ。」と言っていた。

社交性もお酒好きもここまでいくと、アウトゾーン。

何事もほどほどにやな。と他人の肝臓のダメージを糧に、学んだのであった。

心あたりのある方は気をつけていただきたいし、僕も気をつけたい。

〔タダほど怖いものはない〕

と、よく言うが、ある日、レセプションで働いていた僕の元に、ウォークインの若い白人娘の二人のお客さんが来た。

ウォークインというのは、予約無しの飛び込みで、「今日ベッド空いてる?」ときいてくるお客さんの事である。

それ自体はよくある事なので、いつも通り、値段などを案内していたのだが、二人は息が荒く、様子が違ったので、
「なんか焦ってるようやけど、大丈夫?」とたずねた。

するとそのうちの一人が
「大丈夫なんだけど、あとで警察に電話したいから電話貸してほしい。」といい、もう一人が声をあげて泣き出した。

(えぇ。。なにあったんや。面倒はごめんやでぇ。。)と僕も動揺したのだが、
「なにがあったん?まぁここは安全やからちょっと落ち着きーな。」と水をだしてあげた。

すると冷静だった方の一人がいきさつを教えてくれた。

2人は予算を節約してヨーロッパを旅しているバックパッカーで、できるだけお金をかけたくないタイプだったそうで、カウチサーフィンというサイトをよく利用していた。

カウチ(ソファー)サーフィンとは、旅人向けに、地元の人がウチのソファーでよければタダで泊まってもいいよ。というスタンスで、予算を抑えたい旅人と、旅人を受け入れて新しい人と知り合い、世界を広げたい人のためのマッチングサイトである。

彼女たちはミュンヘンでもそのサイトを使い、ある人と知り合い、その方の家に泊まらせてもらう約束をしていたそうだ。

彼女たちの到着の時間にその方は家にいないとの事で、ポストに鍵を残してくれていたそうで、さらにスマホがインターネットに繋がっていなかった彼女たちの為に、事前にWi-FiのIDとパスワードも事前に教えてくれていたという優しいホストだった。

その方のニュアンス的には、
「ポストにある鍵で勝手に入ってね。Wi-Fiあるから繋げてね。一応念のために、無事に家に入れたら連絡して!」ということだった。

とても良いカウチサーフィンのホストを見つけた彼女たちは、手順どおり、その方の家に入り、Wi-Fiに繋ぎ、ホストの方に感謝の念を連絡したらしい。

その家は広く、とても素敵な家だったそうだが、そこで彼女たちが奥の部屋で目にしたものは、壁一面に飾られた写真たち。

どんな写真かというと、拷問器具で痛めつけられた、数多くの女性の姿の写真で、真ん中には

「次は誰だ?」と書かれていたそうだ。

スマホを確認すると、繋がっていたWi-Fiも切断されており、極限の恐怖の状態で、ウチの宿に駆け込んできたとのことだった。

1人はパニック状態だったが、しばらくすると落ち着き、警察にも電話したが実害がないのでやりようがないとの事だった。

みなさんも、うまい話やもうけ話には、くれぐれも気をつけていただきたい。


〔こんな老後ええな〕
ある日、すごく優しそうなオーストラリア人のおじいさんが宿泊していて、お話好きのようでよく話していた。

ウチのホステルは、格安の2段ベッドの共同部屋と、ビジネスホテルのようなプライベートルームがあり、おじいさんは若者と話をするのが好きで、ホステルのプライベートルームによく泊まるとのことだった。

僕もこの朗らかなおじいさんのキャラクターが好きで、雑談をしていると、
「なおやは本当に楽しくていい子だねぇ。またオーストラリアにくることがあれば、ぜひウチの家に泊まっていいよ。」
と言ってくれた。

僕は「えーありがとう!」といい、僕たちの世代同士ならここでインスタグラムやフェイスブックを交換するのだが、おじいさんは紙に家電の電話番号と孫のメールアドレスを書いてくれた。

そのかわいくて、愛おしいキャラクターに、心が癒されたのは言うまでもなく、たとえ彼がもう僕のことを覚えていなくても、僕はこのことをずっと覚えているだろう。

〔雑な人〕
たまに朝のシフトもはいる僕。

朝の仕事はおもにチェックアウトするお客さんからカードキーを返してもらう事。

そのウチの一人が、アジア人の僕をみて
「サヨナラ!ニーハオ!カムサハムニダー !」といって出て行った。

ザツーーー!

〔ノイシュバインシュタイン城〕
これはホステルでの話ではないのだが、僕にはロンドンに住む姉がおり、ある年の瀬にミュンヘンに遊びにきてくれた。

ミュンヘンから二時間ぐらいのフッセンという街に、シンデレラ城のモデルと言われているのノイシュバインシュタインというお城があり、冬にいくと、雪の屋根が美しさをさらに引き立たせる。

姉は初めてのミュンへンだったので、一緒にお城に行くことにした。

最寄りのバス停からお城の麓までは少しだけ距離があるのだが、僕たちは歩いて向かうことにした。

山の上にあるお城のため、道中は坂道で、年配の方や道楽もんのために、馬が荷台をひいてそれに乗って向かう人たちもいた。

僕たちが歩く横を、馬がのっそのっそと通り、僕たちは急な坂に「まぁまぁエライな。」といいながら歩いていたところ、僕はなんてことない、すかしっ屁をした。

一発のすかしっ屁ぐらい日常茶飯事なので、そのまま歩いていたのだが、まぁまぁ臭いタイプの屁であった。

そのタイミングで馬が横でうんちをしており、それをみた姉が

「うわ、めっちゃ馬のウンコくさい。」と言った。

一発すかしてた僕は、(絶対僕の屁や。)と思い、お馬さんに濡れ衣も着せたくなかったので、

「あ、ごめん。屁こいてん。」と正直に謝った。

姉はどうしようも表せない、ニヤケとも違う、悔しそうな表情で、バシバシと僕を殴ってきた。

個人的には美しい雪化粧のお城より、この時の記憶がよく残っており、いまでも思い出し笑いするほどなので、旅はおもしろいなぁ。と思う。



 

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