年齢と敬語




「日本人ですか?」
「お名前は?」
「何歳ですか?」

これを僕は<日本人旅人、三大はじめまして質問>とします。

名前と出身については全世界共通。

 この「何歳ですか?」は出会って速攻質問されることは、他の国の人からはほとんど無いよなという印象。

「欧米人は人に年齢聞かないんだよ!それは失礼なんだよ!素敵!」
っていう欧米かぶれがおるようですが、ある程度仲良くなったら会話の中で年齢を聞くこともあるんやで。

年上を敬うという日本の文化と、年齢で大きく判断しないという西洋文化の違いが大きいのは確か。

「欧米人は年齢で人を判断しないから、敬語なんてないんだよ!素敵!」
っていう欧米かぶれがおるようですが、ある程度目上の人には丁寧な言い回しもあるんやで。


今回は日本の素敵な文化の1つである「敬語」についてのお話。

タイを後にした僕は、今回の旅の2カ国目、カンボジアにバスで移動。

バスで国境を越えるのは僕も初めての体験でちょっと不安もありながら、カンボジアに入国後、バスガイドのうさんくさめの男が色々とカンボジアでの注意点などを英語で説明してくれた。

車内には欧米系の外国人と、意外にも日本人の若者が5人もいた。

休憩所で、1人の男の子が「日本人ですか?」と尋ねてきた。

彼は日本人大学生でとてもしっかりした、21歳のケイ君で夏休みを利用して東南アジアを旅しているとの事。

今回の旅で、まだあまり日本人の友達ができていなかったから話しかけられて嬉しかった。

お互いに名前を伝えて挨拶をしたところで、

ケイ君「何歳ですか?」

僕「29歳です」

ケイ君「僕より8つ年上なんですね。」


ここで感じる絶妙な距離感。


そして僕らの会話を聞いて、また別の日本人の男の子で、ややオチャラケキャラのユウ君が話しかけてきてくれた。

3人になり話していると、ユウ君も21歳の大学生。

2人して同い年やん!と盛り上がり。

そしてその後、

ユウ君「なおやさんは何歳ですか?」

再度29歳である事を伝えて、再度絶妙な距離感を感じる。

たった5分の間で(そろそろ若者ではない事)を2回も悟らせんといてくれよ。

そしてバスは目的地に到着。

バスガイド男のうさんくささは的中し、下車後チップを要求してきやがった。
仕方ないから40円ほどのチップをよこしてやった。
ちっ。
皆さんもあまり高額なお金は渡さないようにね。

そこから3人でトゥクトゥクをシェアして市内へ。

そう、このトゥクトゥクの車内で、それは起こったのである。


【1人だけ敬語で話される事件】


ケイ「2人はどこを旅してるんですか?」

ユウ「俺はタイ、カンボジア、ベドナム!」

ケイ「おぉ!僕も同じやで!」

ユウ「おぉマジで!?」

ケイ「なおやさんは、どこに行くんですか?」

僕「僕はベトナムの後にもっと東南アジアをぐるっとまわる予定やねん!」

ユウ&ケイ「あーそうなんですかー。いいですねー!」


僕はこの距離感が実はあんまり好きじゃないのであーる。

いかんせん僕は、友達として接している年上の人と敬語で話してる時に、
「もう敬語で話さんでええよ」って言われたら、その返事から敬語を瞬殺で終了して
「あ、ほんま?ほな辞めるわ。面倒くさかってん敬語。てか自分さぁ~」

と、急に慣れなれしくできるタイプ。

同じように2人にも、せっかく旅にきて上下関係も気にせんでいい自由な時間やねんからさ、敬語はここでは忘れて普通に話してくださいな。年齢はただの数字やで!と伝えるも

ユウ&ケイ「いやぁ~さすがにちょっとそれは難しいですよー!!
敬語の方が楽ですし、気使ってるわけではないので大丈夫ですよ!」

との事。

もちろん年上を敬う敬語は素晴らしい日本の文化の1つで良い事なんやけど、どうしても僕は気を使われてるなぁーと思ってしまうわけよ。

例えば何か冗談を言った時に
「なに言うてんねん!」と「なに言ってるんですか!」じゃあ、テンポというかリズム感というか、それこそ距離感を感じるというか。

まぁ短時間じゃなかなか難しいかと考えながら、連絡先を交換してそれぞれの宿泊先で別れた。

ベッドでしばらくゆっくりしてると、ユウ君からラインで
「こっちの宿泊先で話してた人と明日一緒に観光行かないか誘われてるんですけど、なおやさんも一緒にどうですか?」と誘ってくれた。

特に決まった予定もなかったので、是非!と、ふたつ返事。

そして話の流れでユウ君と2人で夕食に行く事に。

カンボジアのシエムリップというアンコールワットで有名な街の繁華街を歩きながら、せっかくなので記念撮影。

1人で歩いてた人に写真をお願いすると、偶然日本人の男の子で、1人なら一緒にご飯いくかい?と声をかけて、ついでに明日の観光も一緒に行く事に。

こんな道端で偶然出会った人と速攻で時間を共有する事になるのも、海外旅ならではやなぁといつも思う。

彼はイツミ君というこれまた19歳の若者。

案の定年齢を聞かれて、気持ちは、もうこれ以上僕を年寄り扱いしないでくれ!という気持ちやった。

レストランでビール片手に色々話してると、2人とも敬語ではあるもののフレンドリーに話してくれて嬉しかった。

ある程度時間がたったところで、ユウ君と同じ宿で、明日の観光を一緒に行こうと提案してくれた、シュウ君が合流する事に。

シュウ君は北海道出身のさわやかな21歳。

初めまして!と挨拶を交わして、
次の質問はやはり「何歳ですか?」

僕「20歳です!」

大嘘。

アイドルタレント越えの年齢詐称を無意識にかました。

僕の防御フィルターがここで自動的に働いたのである。

シュウ「あぁ、まだ若いんだね!大学生?」

僕(っしゃ!いけた!)「そうです!!!」

オチャラケキャラのユウ君もこの大嘘に「俺らより1つ下やで」と乗ってくれた。

ここでオサライしておくと、現在テーブルを囲むメンバーは4人で
シュウ君 21歳 騙され中
ユウ君  21歳 オチャラケキャラ
イツミ君 19歳 最年少
なおや君 20歳 設定

設定上、1歳年上の2人には特に何の断りもなく、タメ口で話してて、あくまでも設定やけど、騙してるシュウ君に生意気やなと思われてたらどうしよう。と不安やった。

イツミ君は設定上でも1歳年下で、遠慮しいなのか、全員にまだ敬語で話してくれていた。

オチャラケなユウ君は僕の大嘘を引き続き守ってくれて茨城県出身やのに
「お前、ナニイウトンネン!」という関西人以外が話す関西弁で場を和ませてくれていた。

シュウ君はその間も僕の年齢を疑う事もなく、後輩と話すかのごとくナチュラルに話してくれていた。

そうそう!みんな違う環境で育って、こんな異国で出会ったんやから、それぐらい普通に話してくれりゃええのよ!と大嘘をついた事もやや忘れながらトークに華を咲かせていた。

お金を貯めて、数年に渡って世界中を旅している事を言うと、
「大学生なのにそんなにお金貯めれてすごいなぁ!」と言われた。

あ、、、やべ。
と思ったけど、設定年齢で多少つじつまがあわへん事も、その場のノリで誤魔化した。

そんな時に大学の話になり、うちの大学では、あーだ。俺の大学ではこーだ。と盛り上がり、ハタチの大阪の大学生である僕も、昔を思い出し、僕の大学ではこんなんやでー。と話を合わせていた時に、つい、禁句を放ってしまったのである。


「やっぱり、若いってええ事やなぁ~!」

おっさん臭さ100点。

騙されているシュウ君が「いやいや!なおやの方が若いでしょ!アハハ」と反応した。

僕「あ、、うん。。そうやったね。ハハハ」


やってしまった。。。

そこで一気に罪悪感にさいなまれ、僕は自問自答した。

年齢で人を騙して、偽りの友情に喜びを覚えて、年齢はただの数字と言っていた僕が、その数字を一番意識してしまっているではないか。

本当に年齢が数字というのなら、こんな嘘をつくよりも、きちんと誠意をもって態度で示し、年下の彼らにも真に親近感をもってもらう事が本当の友情なのだと気付いたのである。

いざ決意。

僕「シュウ君、ごめん。僕、ほんまは29歳やねん。」

シュウ「え?!嘘でしょ?!嘘だ!」

ユウ&イツミ「本当なんだよね~。」にやにや。

シュウ「えぇ!全然見えない!20歳でもすっかり騙された!」

僕もにやにや。

これは喜びのにやにや。

僕「でも全然気にせんでええから、これまで通り普通に話してや!」

シュウ「いや、気にするよ!」

そらそうか。

シュウ「えー、じゃあなおやさんは働いた会社辞めて旅してるってことですか?」

タメ口会話、終了。
アリガトウゴザイマシタ。

1時間ほど普通に話してたのに、、、 
やはり日本の敬語文化は根強いものである。


3人はとても礼儀正しく、次の日の観光も敬語は抜けなかったものの、とても楽しい観光ができた。

敬語であろうとなかろうと、僕の方こそ、あまり気にしないようにして、それも日本文化だと受け止めよう思うようになった。

嘘の世界は居心地が悪い事と、20歳でもシレっと言うてしまえば、意外といけるもんである事を教えてくれた3人には、感謝の気持ちでいっぱいである。

ある知り合いが「35歳までは自分を若いって言っていいんだよ」って言うてたから、特に何の根拠もないみたいやけど、僕もそう思って生きていきます。

当時の状況を思い出しながらこのブログを書いて、
 「やっぱり20歳で通せたのは嬉しいな」と反省の気持ちを忘れつつ、

 改めてニヤニヤしている僕なのであった。