ヴィパッサナー 瞑想修行
シャワー上がりに踊るデービッド
自分がものすごくいけてると思ってるデービッド
10日間の瞑想を終えたデービッドの姿
1つ前の日記で紹介したドイツ人のデービット。
彼は若いのに自分の考えを持ちつつ、かつ僕たちの意見にもしっかりと耳を傾け、色んな話題について議論したりして、僕も彼から学ぶことがとても多かった。
しかし、ちびまるこちゃんの山田くんを西洋人化して、かつ大人にしたようなタイプとお伝えしたとおり、「なんかバカ」なのである。
例えば、
裸足で汚い街を1日中歩いたり、
濡れた靴のまま夜行バスにのって、それが臭すぎて僕と喧嘩したり。
口を開けば「あの女かわいい。ええ女や。やりたい。」
道行く白人観光客に「ハロー !ホワイトピーポー!」と声をかけたり。(こいつもホワイト)
とまぁ、たまに何考えてるんやろなコイツと思わせるような人である。
そんな彼と出会ったミャンマー初日に、「ヴィッパサナー」というインド仏教起源の瞑想の10日のコースを受けると言い、僕も一緒にどうかと誘ってくれた。
そのコースのホームページを見てみると、
・毎朝4時起き、1日12時間の瞑想、
・ 他人との会話、ジェスチャー、アイコンタクト、ネット・電話、禁止
・1 0日間はお肉無しのベジタリアンフード、 朝食と昼食のみで夕食がなく、もちろんお酒もNG
・ 音楽、テレビ、エクササイズ、性的行為なども全部禁止
まさに僧侶をモデルとした生活を基盤とした瞑想法なのである。
上記を読んだだけで「げっ。。。!!」と思われただろうが、僕もまさにその気持ちやった。
「ちょっと考えるわ」と返事をしたものの、実は瞑想(Meditation)は以前から、リラックスの為に僕自身も行っており、興味が非常に強かった。
1日考えて、僕も受けるわ!と申し込みを済ませた。
そして、開始の日まで、2週間ほど一緒に旅をして、いざ当日。
あらわしにくいドキドキの感情を抱えて、受付を済ませ、オリエンテーションまでしばし休憩。
僕「いやぁ~この10日間どうなるかなぁ~」と不安をいうと、
デービッド「なおや、できるかぁ?俺はもう覚悟決めたよ、できる。できる!」
僕「10日やでー、会話無しはキツそうやわー」
デービット「やるからには真剣にしよう!ふざけるのは無し!」
僕「そりゃもちろんそうや。」
という具合で、他の参加者と交流し、オリエンテーションを済ませ、禁欲と瞑想の10日間がスタートした。
リーーーーン。リーーーーン。
起床のベルが鳴る、翌朝4時。
適度な緊張もあり、すっと目覚めて、瞑想ホールへ向かい指定の席へ。
朝4時から2時間の最初の瞑想を終えた。
いうまでもなく2時間の瞑想はしんどい。
そして、長めの朝食休憩が1時間半。
みんな食事は2、30分で済ませ、その後は、日光浴をしたり、ベッドに戻ったりと思い思いの時間を過ごしている。
無言で。
僕も庭を散歩したり、ちょっとベッドに転がったりして時間を潰した。
無言で。
そして、休憩終了の呼び出しのベルが鳴り、改めてぞろぞろと瞑想ホールに集まる。
そして瞑想開始時間。
指定の席に、デービッドの姿は、ない。
僕は確信した。
あいつ絶対寝過ごしてる。
このコースをサポートして頂いているボランティアの人たちも、
「あれ?◯番の人が来ていない」と騒ついている。
早速遅刻しているデービッドである。
ボランティアの方がデイビッドを連れて、瞑想ホールに入ってきた。
やっぱりお前か。
すでに瞑想は始まっていたが、ガザガザと音を立てて入室してきたデービッド。
その表情だけは一丁前に、真剣に取り組んでますというような真面目な面持ちである。
なんやねんこいつ。
わろてまうわ。
そんな僕の気持ちをデービッドは知る由もないまま、1時間半の瞑想は終了し、10分の休憩を挟んで、次の瞑想時間に突入した。
次は1時間半の間は、各自室のベッドで行うというもので、座位がしんどければ、10分だけなら寝転びながらでも瞑想オーケーというもの。
ホールで行うよりも緊張感が少なく、やはり睡魔との戦いである。
僕もウトウトしてしまい、うっかり10分ほど眠りに落ちてしまった。
なんとか意識を取り戻しながら、終了のベルを聴き、午前11時、昼食時間になった。
食事は指定席で、決まった時間に決まった席で食事をとる。
その決まった席にデービッドはというと、
いない。
確定的に、あいつまた絶対寝てると思った。
ちなみに食事は肉無しのベジタリアンフードやけど、メッチャ美味しくて、毎日おかわりしてモリモリ食べて、毎日、便通が最高やった。
人生の快便ランキングトップ10はこの10日間に凝縮されるほどのあっぱれ。
きったね。
昼休憩は2時間あったが、意外と庭を散歩している人は誰もおらず、僕は1人で庭をうろついていた。
とっくに全員が食事を終えた正午ごろ。
完全に寝起き顔のデービッドが部屋から出てきて、食堂の方へ向かう彼の姿が見えた。
なんぼほど寝んねん。
思い出して欲しい。
開始直前に「俺はもう覚悟できた。なおや、できるかぁ?」と偉そうに言うていたこいつを。
全然できてへんやないかい。
(こいつ、今から昼飯食えると思ってんな)と僕は確信したのだが、会話とジェスチャーすら禁止されているこのコースであるため、心を鬼にして無視をした。
食堂へ向かうデービッドの背を見ながら(どうすんねやろ)と観察していると、さすがに誰もいない雰囲気に異変を感じて、彼も不安になったのであろう。
10メートル程離れた僕の方に振り返り、右手をチョキの形、左手をお皿の形にして「食事は?」の合図を送ってきた。
!!!!!
こいつは禁断のジェスチャーを初日にして破ってきやがった。
まさに《え、ご飯どうなってんの?》という不安げな表情である。
その不安そうな表情と情けないジェスチャーに、不覚にもニヤニヤ笑ってしまった。
笑ったらアカンって言われたらよけい面白い。
僕は両手を左右に広げて《もう終わった》という事をジェスチャーで伝えると、デービッドはまさに《動謡を隠せず》という表情で、グングン僕の方に近づいてきた。
そして耳打ちで
「ランチはどうなってんの?!」とついに話しかけてきた。
こいつは。。。
お前の質問したい事は重々承知してるよ。こっちも。
休憩中ですら他者との交流を断ち、瞑想に没頭する。というのがこのメソッドの教えにも関わらず、速攻で僕の邪魔をしてきたのである。
僕「もう12時やし、とっくにランチ終わってるし、、、」と小声で伝えると、
「Oh No………」と言い残し、その辺をソワソワ、うろうろしだした。
気持ちはわかる。
この昼食を抜かすと、夕食がないので、翌朝6時まで食事がお預けなのだ。
彼もどうしても、諦められなかたったのであろう。
彼は通りすがりのボランティアの人に事情を説明してる様子だった。
ボランティアの人もそれは困ったという表情で、偉いさんに確認をし、デービッドを食堂へ連れて行っていた。
散歩をしながらふと食堂の方をちらっとみると、彼は広い食堂で1人で昼食をとっていた。
こいつは。。。
そして次の日も、その次の日もデービッドは朝食後の一番眠たい時間の瞑想トレーニングに遅刻して、ボランティアの方に連れてこられては、何事もなかったかのように着席し、目を閉じて瞑想していた。
ちゃっかりした奴である。
4日目以降はリズムも整ったのか、デービッドもようやく遅刻せずに毎日のトレーニングに勤しんでいた。
ある日、食堂へ向かう通路の人波の中、宙に浮いたペットボトルが見えた。
彼は頭にペットボトルを乗せて、落とさないようにと、食堂までの通路を1人超スローペースでソロリソロリと歩いていた。
僕を含めたみんなは、構う事なくスタスタと彼の横を通り過ぎていった。
特におしゃべりのデービッドも退屈と戦っていたのであろう。
もうここまでくると、(お前も頑張れよ)と何とも言えない、兄心が芽生えてきていた。
(これを読んでくれている方も同じ気持ちで応援してあげてほしい。)
個人的には4日目、5日目あたりがゴールがなかなかイメージできずに、一番しんどかった。
そして、10日目の午後からこの会話禁止は解かれ、他の人と会話しても良いことになる。
あーやっと明日、みんなと話ができる。とおもった9日目の瞑想時間。
目を閉じて瞑想に努めていると、右側から「ヒーーーッヒッヒヒ///」という声を殺しながらの笑い声が聞こえてきた。
まぁまぁのボリュームの笑い声で、僕は隣の隣のロシア人のおっちゃんが笑ってるもんやと思い、
(やっと終わりが見えてきたからっていうて、このおっさんは最後に気抜きやがったな。ったく。)と目を閉じながら考えていた。
しかも、その笑い声はしばらくたっても収まらない。
こっちは最後までトレーニングを遂行しようとしてるのに、、、
ええ加減にせーよ!とうっすら目を開けて右側をちらり。
隣の隣のおっちゃんは、目を閉じて、瞑想をしていた。
あれ?
ロシア人のおっちゃんを超えて肩を震わせている奴が目にうつる。
そう、デービッド。
僕とは5メートルぐらい離れているにも関わらず、僕に丸聞こえするほど、ヒーヒー笑っており、デービットの周辺の人たちもつられて笑っていた。
デービッドは笑いに耐えられずに、瞑想ホールから退出していった。
ほんまどうしようもないやつめ。
そして次の日、10日目。
ようやく沈黙のルールが終わり、みんなと談笑できる時間になった。
みんな輪になって、壊れたラジオの様に、ベラベラ喋っては笑い合っていた。
僕はデービッドに「昨日、最後なんであんなに笑っててんな?」と尋ねると、
思い出したように、今度はネジが外れたように爆笑して
「アーーーーハッハッハ!!ちゃうねん。俺の前の奴がな、ブッーっと屁こいてな、、、ひーーーひっひっひ。めっちゃ臭くて、笑ったらアカンと思えば思うほど、、、AHAHAHAHA!!」
一緒に話していた生徒は全員もう大人。
普段ならこんな低レベルな小学生のような屁ネタを相手にしないだろう。
ある人はしっかりとした仕事をしてはるやろうし、ある人はロマンチックにパートナーに愛を囁いたりもしているだろう。
しかし、ここは全員が10日ぶりの会話という非日常を乗り越えた者達。
ドッと全員つられて大爆笑し、しばらくヒーヒー言いながら「くだらねーーー!」と大盛り上がりで、ヴィパッサナーの瞑想コースは終了したのであった。
例のごとく、まったく参考にならなかったと思いますが、京都と千葉で同じコースが受けられる様なので、気になる方は、ぜひどうぞ!
帰りの空港に向かう満員のバスでは、でかいバックパックを持っていた僕に気づいたとても親切なミャンマーの方が座席を譲ってくれた。
ミャンマーについてあまりイメージがない人も多いと思いますが、本当にミャンマーの人は親切な人が多く、とても心温まる1ヶ月間でありました。